大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 昭和50年(ラ)138号 決定

抗告人 鈴木友子

右法定代理人親権者 鈴木つるゑ

右代理人弁護士 岡本弘

相手方 松岡たけ

〈ほか三名〉

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は、抗告人の負担とする。

理由

本件抗告の趣旨及び理由は、別紙即時抗告の申立書記載のとおりである。

本件は、被相続人の死後確定判決により認知された抗告人と共同相続人たる相手方らの間の遺産分割等調停事件(名古屋家庭裁判所昭和四九年(家イ)第九三九号)につき、合意が成立しないで調停不成立となったが、右認知の判決前、すでに全遺産の分割を終えているため、原審は、民法九一〇条により、その相続分に応ずる価額の支払請求に関する事項として処理されるべきであり、かつ、右事項は訴訟事項に属し、家事審判法九条一項乙類の審判事項に含まれず、本件につき同法二六条の適用はないから、調停の不成立により事件は終了したものであるとし、手続関係を明確にするため、「本件は調停の不成立により終了した。」との審判をしたものであることは、原審判の判文上明らかである。

まず、本件抗告の適否について判断するのに、家事審判法一四条によれば、家事審判に対する不服申立は最高裁判所の定めるところにより即時抗告のみが認められ、かつ、家事審判規則により抗告の対象となる審判が規定されているところ、本件の如き手続関係を明確にするためになされた事件終了を宣言した審判に対し即時抗告を認めた直接の規定はない。しかし、本件記録によると、昭和五〇年一一月一〇日本件調停が不成立となったため、調停委員会は調停不成立の調書を作成し、原審において、即日家事審判事件として立件した上、同月一三日原審判をなしたものであることが認められる。しかして、家事審判法二六条によると、同法九条一項乙類に含まれる事件について調停不成立の場合は、調停申立のときに、審判の申立があったものとみなされるところ、前記事件処理の経過に徴すれば、本件を右乙類審判事項に含まれないとして事件の終了を宣言した原審判は、これに含まれると主張する抗告人の審判申立を却下する実質を有するものと見ることができる。そして、家事審判規則一一一条によれば、遺産分割の申立を却下する審判に対しては即時抗告ができるのである。以上の理由により、かような審判に対しても、即時抗告ができると解するのを相当とするから、本件抗告は適法である。

よって、原審判の当否について判断するのに、当裁判所も、本件についての原審判の事実の認定及び民法九一〇条による相続分に応ずる価額の支払請求に関する事項が訴訟事項であって、審判事項でないとする原審判の判断を相当として是認するものである。

してみると、本件抗告は理由がないから、これを棄却すべきものとし、抗告費用の負担につき、民事訴訟法九五条、八九条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 柏木賢吉 裁判官 夏目伸次 菅本宣太郎)

〈以下省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例